2019年10月23日に開催されたイベント「5G×ワークシフト:5Gとアバターロボットが開く未来のワークスタイル」。各セッションの概要をご紹介いたします。
アバターロボット、人間拡張の全体俯瞰
- 人間は道具を作り、使いこなす生き物である。様々なテクノロジーを生み出すことで生活を豊かにし不便を補い、種としてできることを”拡張”してきた。
- VRやARなど新しい技術によって、これから”拡張”されようとしているのは何か。映像や音声を加えて、動作の伝送や雰囲気の共有が可能になるのではないか。
身体体験のリデザイン 〜テクノロジーの進化で僕らの身体性はどう変わる?
- もともとVRを研究していたが、現在は超人スポーツやスタートアップの立ち上げに関わり、身体全般に研究領域を広げている。スポーツとテクノロジーを掛け合わせて、新しい価値を生みだそうと取り組んでいる。
- 産業革命後、自動車の発展と共にF1が生まれたように、産業とスポーツは関わり合いが深い。スポーツが新技術の実験場になり、実社会にフィードバックされることもしばしば。スポーツを「する・観る・支える」に加えて、新しいスポーツを「作る」ことで時代を先に進めたい。
- 1960年代、既にIvan Sutherland(アイバン・サザランド)によってVRの雛形が作られており、テクノロジーはいま、概ね氏の予言に沿って進化している。VRの次のメディアとして注目されていいるのが「身体性メディア」による、体験や雰囲気の共有・拡張・新規創造である。
- テクノロジーによって人間ができること・できないことの境界が変わりつつあり、それによって「どのように世界を感じるか」や「人と人の繋がり」がリデザインされ、人間の可能性自体が拡張されている。
アバターロボットが引き起こすパラダイムシフト
- 日本は高齢者の割合が世界で最も高い。世界的にも少子高齢化が進み、社会構造が変わりつつある。人手不足が深刻なのがサービス業であり、特に清掃と警備など、ビルメンテナンス業界は労働者の確保が難しい。
- 女性/高齢者の労働参加、経済移民などが試みられているが、人口減少のペースには間に合わない見込みであり、ロボット・AIなどによるサポートが必要不可欠。近年ではテクノロジーの進化と新しい産業の流れにより、タブレットやウェアラブル機器など安価で汎用性が高く、より小型化されたIoT機器が導入しやすくなった。
- アバターロボット「ugo」は機能を移動と軽作業に絞り、遠隔操作と半自動化並行作業を実現した。プラント管理・ビルメンテナンス・家事代行サービス・介護施設や店舗のバックアップなど、多くの領域で省力化が見込める。
- 単純作業はロボットにまかせ、逆にロボットで難しい部分や確認業務は人間が行う「人間とAIのいいとこ取り」を目指している。オペレーターは移動コストもなく、雇用の柔軟性も高い。新しい働き方・ライフスタイルも可能になるはずである。
寝たきりの、先へ行く 分身ロボット
- 病気や入院、交通事故による障害、高齢者、単身赴任など、様々な理由によって引き起こされる「孤独」を問題と考え、コミュニケーションテクノロジーにより社会課題を解決したいとの思いからロボット作りを始めた。
- 「OriHime」はAIではなく人間が操作する「分身ロボット」。小型で、簡単な操作によりモーションやジェスチャーで感情を伝えることができる。テレワーク実現のためのモデル、難病者向けのモデルなどのバリエーションがある。
- 大手町で期間限定で、外出困難者が分身ロボットを操作して接客を行う「分身ロボットカフェ」を開催した。この取り組みの成果を見るに、外出困難者が雇用を通して社会との接点を持てる未来の形が示されたと思う。
- デバイスとの接続に課題があるが、今後5Gなどのテクノロジーの進歩で解消されることを期待している。また、ロボットに対するROSの自動配布も容易にできるようになるのではないかと考えている。