「5Gにまつわる3つの誤解」 -5G×ライブコンテンツ

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2019年6月18日に開催されたイベント「5G×ライブコンテンツ :5G時代の双方向コンテンツとは」に、5Gイノベーション事務局より玉置が「5Gにまつわる3つの誤解」というテーマで登壇しました。
これまでの5Gイノベーションの活動を通して、「5Gについて誤解されていることや伝わっていないことがあると感じた」と語る玉置。5Gについてどのような誤解があり、どのように理解するのが適切なのでしょうか。

解決したい3つの誤解

5Gにまつわる3つの誤解として、玉置は下記の3点を挙げています。

  1. 3つの特徴を全て網羅できません
  2. 5Gの低遅延は無線区間での改善
  3. 5Gの特徴はこれだけではない

それぞれの誤解について、より詳しく解説していきます。

誤解1:3つの特徴を全て網羅できません

まず、一つ目の誤解について明らかにします。

「一般的に、5Gの代表的な特徴は『5Gの高速・大容量』『無線区間の転送遅延』『多数の端末との接続』の3つと言われています。しかし、一つのサービスやアプリケーションにおいて、その全ての特徴を網羅することはできません。」

サービスやアプリケーションの特徴に合わせて、必要な要素を選択する必要があると説明します。

1つ目の誤解を図説するスライドの画像

また、「高速・大容量」という特徴について、このように深掘りします。

「5Gでは上りと下りの通信速度の比率を変えることができます。4Gの時は下りと上りの通信速度の比率は10:1でした。これが5Gになると、理論値では20倍早くなりかつ比率の変更が可能となります。例えば比率を5:5(理論値で下り10GB、上り10GB)とした場合には、上りの速度が4Gと比べて数十倍、もしくは100倍近く速くなる可能性があります。」

現時点ではあくまで仮説であり、実際には運用開始後の検証になる、と前置きした上で、この可能性への期待を示しました。

誤解2:5Gの低遅延は無線区間での改善

二つ目の誤解について、

「低遅延の対象となるのは無線区間、つまり端末から無線アンテナまでの区間のことを指しています。」

と説明します。

この区間の通信は、現状ではおよそ10ms(0.01秒)の遅延が発生しています。5Gではこれを1msまで短縮することができると言われています。

一方、モバイルネットワーク内では、無線アンテナからインターネットゲートウェイに到達するまで100msかかると言われています。4Gの場合、モバイルネットワークを通ると行って返ってくるだけで200msの遅延が発生することになります。5Gで改善する可能性は示唆されているものの、具体的な数字はまだ明らかになっていません。

2つ目の誤解を図説するスライドの画像

このように説明しつつも、玉置は低遅延への期待を滲ませます。

「5Gによって、トータルのレスポンスタイムは改善する見込みです。また、MECなどを組み合わせることによって、劇的に変わるのではないかと期待しています。」

誤解3:5Gの特徴はこれだけではない

三つ目の誤解について、こう説明します。

「5Gの特徴には、よく言われる3つの特徴のみでは無く、

  • ネットワークスライシングを使ったネットワークの優先制御
  • モバイルネットワーク内でのコンピューティングリソースの活用(MEC)

が挙げられます。」

「ネットワークの優先制御」については、『どのタイミングで優先制御を行うべきか』という観点からこのように語ります。

「サービスの提供ということを前提とすると、優先制御対応のSIMカードやモバイルアプリを利用して、特定のサービスから出されるパケットに関して優先制御を行う、ということが考えられます。また、端末の契約情報と紐付け、特定サービスの特定会員においては優先制御を行う、ということも可能となるでしょう。」

これについては様々な可能性が考えられると述べた上で、「この他にもアイディアがあれば是非とも共有いただきたい」と呼びかけました。

ネットワークの優先制御について図説するスライドの画像

最後に、「モバイルネットワーク内でのコンピューティングリソースの活用(MEC)」という特徴について、前提知識となる「エッジコンピューティング」の説明をするとともに、この技術の活用への期待を語ります。

「エッジコンピューティングは、「エッジ」の定義が各人で異なるため、お話しすることが難しい分野です。
ここでは『どこで動かすか』という観点に絞り、デバイスで動かすものは『デバイスエッジ』、クラウドで動かすものは『クラウドエッジ』、テレコ(キャリア)で動かすものは『テレコエッジ』と命名します。テレコエッジの中でコンピューティングでの処理を行うことを『MEC(Multi-Access Edge Computing)』と呼んでいます。
4Gと5G+MECの比較をしましょう。4Gの時には、端末からインターネット上のサーバーに通信を行った際、最速でも無線区間の往復の遅延とインターネット内での遅延で300ms程度遅延が発生していました。それが5G+MECでは100msの遅延で通信を返せる上、ネットワークスライシングと組み合わせることで安定してその速度を提供できると期待されています。これが新しいソリューションやビジネスの種になると思っています。」

モバイルネットワーク内でのコンピューティングリソースの活用について図説するスライドの画像

5Gの可能性と新しいアイディアへの期待

最後に、本講演のキーポイントをまとめたスライドを提示しながら、5Gの3つの特徴を深掘りした内容と、新たな2つの特徴を持ち帰って欲しい、と玉置は呼びかけました。

まとめのスライドの画像

「一般的に言われる3つの特徴に加え、今回お話しした『ネットワークの優先制御』、『モバイルネットワーク内でのコンピューティングリソース活用』という2つの特徴を組み合わせることで様々な可能性が広がります。5Gイノベーション事務局では、この可能性を皆様と検討していきたいと考えています。」

5Gについてのより適切な理解が共有されることでアイディアが生まれ、そのアイディアの実現・実用化に向けてコラボレーションが生まれることを期待しています。5Gイノベーション事務局一同も、活動を通じてそのような場面に出会えることを楽しみにしています。

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