2020年1月30日に開催されたイベント「【福岡開催】5Gイノベーション×FGN 〜5G時代のアプリケーションとは〜」。本記事では、各セッションの概要をご紹介いたします。
なお、当日はセッションの後に質問会が設けられました。事前質問および会場質問への回答だけにとどまらず、「福岡での5Gサービスについて」、「アプリケーション開発者としてMECを利用する際に考えなければならない事」といったことを登壇者間でディスカッションする場となり、活発な意見交換がなされました。

通信キャリアからみた次世代アプリケーションとは
NTTドコモ イノベーション統括部 秋永

- 「5Gイノベーション」は、各業界をリードする方を招いて話をしてもらい、5Gをどのように活用するか、何の役に立つかを議論する会である
- 議論に当たって必要な5Gの基礎知識として、「エッジコンピューティング」と「ネットワークスライシング」がある。エッジコンピューティングでは、サーバーを無線基地局の近くに設置することで無線の遅延を短くすることができ、低遅延が必要なシステムの実現が期待できる。ネットワークスライシングでは、無線の帯域をスライスすることで優先制御、つまり特定の契約・アプリ・ユーザーごとに一定量の帯域を保証することができるようになる。
- 5Gが活かせる技術として注目されているAR/VR(XR)は帯域を必要とするため、その制限が取り払われれば技術が飛躍すると考えられる。docomoではMagic Leap社と資本・業務提携を行い、デバイスを利用したサービス・ビジネス開発を試みている
- このようなデバイスが出て新しい表現方法が登場したり、AIの活用やビッグデータが獲得・収集できるようになって産業横断的に社会全体が最適化されることを、docomoでは「サイバー・フィジカル融合」と呼んでいる。大きなうねりの中で変わっていくことを一つのヒントに考えれば、5Gがどのようなものなのか考えられるのではないか
NTTドコモの5Gでの取り組み
NTTドコモ ソリューションサービス部 吉田

- docomoは、MEC(※)を活用する機関であるドコモオープンイノベーションクラウド(dOIC)を提供しており、社会の課題解決、およびソリューションの創出とビジネス化にチャレンジしている
- その背景には、ドコモ5Gオープンパートナープログラムがある。技術はあるが活用方法がわからない、課題はあるが解決方法が分からないといったパートナーに対して、5G関連の情報展開やパートナー同士のマッチング、アイディアを持った方へのファシリティ提供を行なっている。その一環として、そしてソリューション・5Gのイノベーションへの核としてdOICの活用を考えている
- dOICの特徴としては、1. MEC(低遅延)が重要な技術要素であること 2. セキュリティや安全安心の観点から、網内における閉域サービスをスムーズかつ安価に提供できること 3. 様々なアセットを組み合わせて提供できる場であるということ である
- 具体的な活用事例として、ARスマートグラスを活用して現場作業の指示出しを遠隔で行う「空間共有支援」、デジタル空間でのデザイン作業を実現し複数拠点での同時作業を可能にする「3Dデザインソリューション」などがある。5Gおよびそれを最大限活かすdOICで、アイディアや技術の化学反応を起こし、社会の課題解決を目指したい
※MEC:MEC(Multi-access Edge Computing)=通信キャリアが提供するエッジコンピューティングリソース
ものづくりの現場からからみた5Gへの期待
株式会社Braveridge 代表取締役社長 小橋泰成

- 通信が1Gから4Gに進化していく過程には必ず目的があったが、5Gには「何のために」という目的がなく、世界中のどの通信会社も「何かできませんか?」というスタンスでアイディアを募っている
- 福岡でこの5Gの活用方法を編み出すいうことを明確に意識して、かつ過度な投資にはならないようにサービスを展開していく必要があるが、そのためには5Gの特徴をクリアにする「潮目」を掴むことがポイントである
- 例えば、2007年にiphone3が登場した前後の時代の移り変わりは「通話」から「通信」であったが、それを別の言葉で表現すれば「双方向性」から「下り通信」への変化である。5Gの特徴を活かすとすれば、「上り通信」の活用事例が必要なのではないか
- BRAVERIDGEでは、今までの一般的な「IoT端末からクラウドにデータを蓄積し、それをスマートフォン等のデバイスから閲覧する」という仕組みではなく、IoT端末そのものをサーバーとして、インターネット(中継局)を通してデバイスと直に通信を行い低遅延を実現する、という取り組みを行っている。このような発想が、5Gのアイディアのヒントになるのではないかと考えている
5G時代のアプリケーション開発とは
日本仮想化技術株式会社(5Gイノベーション事務局) 玉置

- 5Gを活用した開発のキーは、5GとMECの活用を考えることである。5Gの特徴の1つである「高速・大容量」に関しては、クラウドにアプリケーションを設置すれば実現できるが、「低遅延」に関してはMEC(docomoのサービスで言えばdOIC)にアプリケーションを設置しないと実現できない
- 低遅延が必要なアプリケーションを考える際には、「位置情報×リアルタイム」「VR/AR×インタラクティブ」「スポーツ×リアルタイム」「モビリティ×インタラクティブ」といったような、1つの事象ではなく何かの掛け算で考える必要がある
- MECの利用を検討するにあたっては、開発者はMEC利用のコストに対するパフォーマンス、アプリケーションのUXを損なわないパフォーマンスが何か / どこに低遅延を活かすべきか、といったことを考える必要がある
- アプリケーションをクラウドのみに置くか、クラウドとMECを組み合わせるか、デバイス側で処理するかという問題もある。これは要件によって異なり、それぞれの動作や処理がどのようになされなければならないか、ということに基づいて、ユースケースごとに検討することになる