「5G-XRライブへの挑戦」 –5G×XR

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2019年4月24日、5Gの普及がXRにもたらす変化をテーマに開催されたイベント「5G×XR:5Gで広がるXRの世界」。リブゼント・イノベーションズ株式会社代表取締役の橋本善久氏に、氏が代表取締役CEOを務める株式会社 時空テクノロジーズが5G×XRの実用化に向けて行っている研究・実験について語っていただきました。

講演者である橋本氏の写真

アバターとバーチャル空間が、すべてのコミュニケーションを変える

大手ゲーム開発企業でCTO(最高技術責任者)を務めた経験を持つ面々によって結成された時空テクノロジーズは、ゲーム開発者が持つ知見(3Dグラフィック、オンライン・ネットワーク、ゲームフィケーションなど)を社会に還元し、生活・仕事・エンターテイメントに新たな価値を創出することを目的としている企業です。

「時空」と書かれたスライドと、会場の参加者に対し質問を投げかけ挙手を求める橋本氏の写真

例えば能楽師の身体につけたセンサ・データを利用して伝統芸能の映像演出を行ったり、バーチャルアイドルを開発してオーディション番組に参加させたり、撮影した「落書き」が空間を泳ぎ回るARアクアリウムや、VRでストラックアウトが楽しめるテニスゲームなどの開発を行ったりしています。

現在、同社のメインコンテンツとなっているのが、アバターによる新時代のテレコミュニケーションツール「vmeets」です。これは遠隔地にいる人同士が、仮想空間にアバターの姿を借りて集まれることができるようにするサービスで、企業の会議や、Vライバー(バーチャルライバー)のコラボライブ配信など、硬軟多彩な用途に利用されています。

同社は「vmeets」によるサービスで「バーチャルワールドとコミュニケーションツールを連携させた世界をつくり、働き方・学び方・遊び方などの全コミュニケーションを大幅に変えていこうとしています」と橋本氏は語ります。将来的にはワークライフバランスが取れた生活、年齢・性別・国籍を気にしないコミュニケーション、リアルとバーチャルの境目のない自由な生き方ができる世界をつくることを目指しているとのことです。

実用化に向けて「5Gをいじめてみる」ための5G-XRライブ

同社の目的を実現するためのテクノロジーのひとつとして、5Gも重要視されています。

「5Gには低遅延・高速大容量・多人数同時接続という特性がありますが、同時にすべての特性を最大限に発揮させるのは難しいようです。そこでネットワークスライシングや優先制御、エッジコンピューティングなどいろいろな技術を駆使して、3特性のバランスのどのように取っていくかの検証を、NTT研究所やドコモと行おうとしています」

その研究の素材として、同社が取り組んでいるのが「5G-XRライブ」です。これは現実世界とバーチャルリアリティを融合する取り組みで、バーチャルステージに観客と演者を融合します。観客や演者は必ずしも同じ場所にいる必要はありません。国内や国外にいても良いのです。例えば3人組の歌手が日本のどこかと、イギリスのどこか、アメリカのどこかにいて歌っている映像をあたかも同じ場所で歌っているかのように見せることができるというわけです。

観客や演者は実際の目で見るのではなく、VRゴーグルを通じてバーチャルステージに参加します。演者が歌ったり踊ったりするとその情報にバーチャルリアリティという情報を加えて観客に伝えます。このような取り組みはすでに4Gで実証実験は行なっていますが、5Gでは低遅延、広帯域を実現できますので、このようなデータにさらに派手なアニメーションや映画のような演出を載せて、観客のもとに届けるといったことも可能になっていくかもしれません。

そのような未来を目指し、バーチャルステージに、別の建物にいる観客や演者が参加しようとした時、VR表示に違和感を感じないか、またアクセスするVRデバイスでビューに差が出るのか、演奏や歌が同期されるか、遠方からの参加者が遅延なく合唱できるのか、観客がコールやサイリウムを遅延することなく振ることができるものなのか、そしてグループ感が再現できるのか、さらにパブリックビューイングにした場合や、配信エリアを拡大した時に「ライブ体験」の劣化レベルはどのくらいになるのかなどといった様々な方向性で実証実験を行おうとしているところです。

ライブビューイングは、しばしばVRの代表的な活用方法の一つとして挙げられるものですが、その実現に向けて着々と研究が進められていることが分かる講演でした。

次回はActiv8株式会社代表取締役 大坂武史氏による、5Gで進化が期待されるバーチャルタレントについての講演をご紹介します。

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